マンケ [manqué]
ある日、パリの有名な菓子屋フェリックスで、シェフがビスキュイ・ド・サヴォワの生地を作っていました。ところが、卵白が充分に泡立たず、生地に粒々ができてしまいました。これを見た店主は一言、『この菓子はできそこないだ!(le gâteau est manqué)』
そこでシェフはできそこないのこの生地に一定量のバターを加えてお菓子に焼き上げてしまいました。プラリネを被せて売り場に並んだこの新製品、すぐにある女性に買われました。数日して再びフェリックスに買いに来た彼女は、「先日と同じお菓子」を求めました。
こうしてあの「できそこない」、マンケ(manqué)はフェリックスのスペシャリテになり、ひいてはパリで非常に流行したということです。ですからマンケの生地はビスキュイ・ド・サヴォワに準じた配合《小麦粉:250g、上白糖:375g、バター:125g、全卵9コ、塩:1つまみ、ヴァニラ》で、もともとはブリオッシュ型で焼いていました。その後、専用の型が考案され、この型を [moule à manqué] と呼ぶようになりました。*マンケ型の特徴は上面と下面の面積に差があり、側面から見ると台形をしていることです。マンケ型には丸、四角さまざまなタイプがります。
※用語の解説「マンケ型 [moule à manqué]」参照
参考文献:「ラルース料理百科事典」(三洋出版貿易株式会社)