ベルギーの街角から 4

季節の中で一番快適な夏になりました。湿気のないカラリとした晴天と夜の10時頃にやっと薄暗くなるという日が続く、ベルギー人が待ち焦がれた季節。夏の朝市は彼らが特に好きなところです。買い物籠片手の人でごった返し、ところ狭しと並ぶ屋台には新鮮な野菜や果物。見て廻るだけでも楽しいものです。この時期ベルギー人の女性がセッセと作るのがジャム。サクランボには郷愁があるのか特に人気があります。種を抜くのが面倒なサクランボ用にホッチキスのような簡単な種抜き器具があり、これとペクチン入りの砂糖そしてジャム用のガラスの瓶があれば簡単にジャムが作れます。

このジャム作りの三種の神器、シーズンになるとどこのスーパーにも山積みで売り出されます。昔は食べきれない果物を保存するためにたっぷりの砂糖でジャムを煮ましたが、世界的なヘルシー志向のため、砂糖を加減したマイホームジャム作りや有機栽培の果物を使ったコンポート系のジャムに人気があります。

ベルギーの夏

7月と8月は音に聞こえたバカンスの時期。灼熱の太陽を求めてヨーロッパ中が南へと大移動します。猫や犬などのペットも引き連れての出発です。

バカンス到来を実感するのは、道端の物乞いのジプシーがなぜか忽然と姿を消した時です。50%オフから始まり最後には70%オフなんてことになるバーゲンセールの後、民族大移動が始まります。通りを行く車の数も少なく、土曜日でもスーパーはガラガラ、メトロの中は地図を持った観光客だけという状態になります。ところで、チョコレートの国ベルギーですが、夏に売れるものはバーベキューセットとアイスクリームと相場が決っています。パティスリーの店の前にはアイスクリーム売りのワゴンが出され、大人の男女でもこの時ばかりは子供に戻ったように、何の味にするかなど楽しそうに話しながらの順番待ち。その姿は微笑ましくあり愉快でもあります。

有名パティシエも毎年いろいろな味のアイスクリームやシャーベットを競い、今年もパッションフルーツやマンゴーなど熱帯地方の果物に人気があるようです。果物といえばこの季節ケーキにふんだんに使われるのが赤い実のフルーツやベリー類。イチゴはもとより赤スグリ、ラズベリー、そしてブラックベリーやビルベリーなど自然の恵みが溢れています。まさに夏真っ盛り。

ベルギー人の多くは7月にバカンスに出かけます。飛行機あるいはキャンピングカーで外国に行くか、北海沿いのリゾート地や丘陵地帯のアルデンヌ方面への長期滞在型バカンスが多いようです。北海の海は我々日本人にとっては少々冷たい水ですが皆元気に泳ぎ、子供達は砂の城を作ったり、北海名物のグレーの小エビを網ですくったりと楽しそう。おやつはもちろんゴーフルやクレープ。カフェーでも食べられますが、屋台のゴーフル屋で焼きたての熱々ゴーフルを紙に挟んでもらい歩きながら食べるほど幸せなことはありません。ベルギー人で子供の頃ゴーフルを食べなかった人はいないと断言できるくらい、何時でもどこの売店にもたくさんの人の列ができています。

そして彼らが何週間かのバカンスから戻って来る頃、どの町でも移動遊園地が始まります。食物の人気ナンバーワンがベーニエ。小麦粉と水、卵と砂糖などがタネです。それを丸くして油で揚げ粉砂糖をふりかけたものか、リンゴやバナナにこの衣をつけて揚げたシンプルなものですが、素朴な美味しさは移動遊園地の永遠の定番です。ゴーフルも人気があります。冬に食べる熱々のリエージュ風ゴーフルも格別ですが、夏はなんといってもブラッセル風ゴーフル。

リエージュ風のゴーフルは少し前の日本で「ベルギーワッフル」と言う名でブームを起こしたのでご存知の方も多いはずですが(本場の方がもっと美味しい)、ブラッセル風のゴーフルは大きい長方形で、サクサク、カリッと、頼りないほどの軽い食感が特徴です。粉砂糖をふりかけるだけの超シンプルなもの、タップリの生クリームに果物を飾るものなどありますが、とにかくアッと言う間に胃に収まり、お代わりが欲しくなるほどです。

楽しいバカンスが終わりに近づく8月の最終の週は、新学期に向けて親子ともランドセルやノートなどの学用品の調達に忙殺されます。宿題もない丸2ヶ月間のバカンスは勉強を忘れるという理由で、最近では夏休み中の自主的な勉強帳が売れ行きを伸ばしているとか。そんなことは当たり前と思うのは勤勉な日本人。こちらでは、せめて夏休みぐらいは勉強から開放しろ、と言う意見が大多数のようです。夏休みは畑に出て収穫の手伝いをするための時期だった昔を考えると、ヨーロッパ人には夏休みを勉学に、と言う考えは馴染みにくいのかもしれません。

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