ベルギーの街角から 3

5月に入ると人も草木も一気に「初夏モード」に切り替わるベルギー。庭の梨やサクランボの木は一斉に白い花を咲かせ、街角や公園の花壇そして家々の窓辺にも色とりどりの花が溢れ、人々もそれに負けずとばかりにカラフルな軽装になります。

緑が多いブラッセルには公園も多く、昼休みになるとオフィス街の全員が公園に大移動したかと思うぐらいの賑わいぶりで、青空の下でのサンドイッチの昼食後、水着なしでもなんのその芝生で日光浴に励んだり、読書をしたりなど、一年の中で一番気持ちの良い季節を謳歌します。

初夏は女性の季節

爽やかな初夏、この時期は女性にとって二重に嬉しい季節でもあります。なぜなら、「秘書の日」に始まり、「スズランの日」、「母の日」と、大事にされる日が続くからです。

秘書の日のプレゼントは花束やチョコレート。チョコレートと言ってもこの時期限定のもので、チョコレート製の植木鉢にマジパンの花が咲いているものや花の形のプラリヌなど、いつものプラリヌとは異なります。でも、これらのチョコレートをたくさん買いこんでいる男性を見ると、何となく日本の義理チョコという感じがしないでもありません。

5月1日にスズランを贈るという習慣は中世から既にあり、春の訪れを告げるスズランの花をこの一年の「幸運のお守り」として女性に贈るというものです。この日だけはスズランの小さな花束が街角のいたるところで売られています。この香り高い可憐な花は女性をその日一日中とても幸せな気分にしてくれます。が、私は貰うと複雑な気持ちになります。と言うのも、ほんの数本のスズランの花束がこの日ばかりはバラ数本より高い値段のうえに、もう少し待てば我家の庭にイヤというほど咲くのですから。

5月といえば母の日。幼稚園から小学校中学年までの子供達は学校で先生の指導のもと工作造りや詩の暗唱に励みます。小さい子の場合、例えば、野原で摘んだ花や草を押し花にし、『たいしたものではありません。ほんの少しの野の花だけど心を込めて摘みました。母の日おめでとう』と、カードに幼い字でつづります。こうやって小さい頃から洗脳されているせいか、大人になっても母の日にはかなり気合が入ります。今年はエレガントでシックなお母さんのためにチョコレート製のハイヒールや帽子が登場しました。ところが、父の日は母の日と比べいまひとつ盛り上がりに欠けるようです。でも、今年はネクタイを象ったケーキを見かけました。お父さんの地位が向上した証拠でしょうか。

コミュニオン

5月の週末になると、白い服で着飾った7歳前後の子供達をよく見かけます。これはプルミエール・コミュニオン。つまりキリスト教における初めての聖体拝領(聖餐式)に参加する子供です。ですからこの時期、どこのお菓子屋のショーウインドーにもこれに関するお菓子が勢ぞろいします。キリストのシンボルである白い子羊やマリアまた聖書などが主なモチーフです。

ある時、お菓子屋の前で熱心にそれらを眺めている親子に出会いました。聞くと双子の子供が次の週末に初聖体を受けるので、昼食会の席でのお菓子の注文に来たそうです。キリスト教徒ではない私ですが、その席に呼ばれることになりました。

そして白い洋服を着た子供達がぞくぞくと教会に集まりました。神父の話を神妙に聞いた後が聖体拝領です。親に付き添われた子供が初めて神父から聖体を拝領するという、キリスト教にとってはとても大事な儀式とのことでした。その後、家に帰り親戚中が集まっての大パーティとなりました。子供達はゴッドファーザー、ゴッドマザーはもちろんのこと集まった全員の人からプレゼントを貰っていました。この日はこの子供にとって記念すべき日でそれを祝うのは分りますが、それにしても、招待する方のお披露目の立派さにも、豪華なプレゼント攻めにも驚ろかされました。後日他の人に聞くと、コミュニオンを口実にした単なる見得の張り合いだと苦笑していましたが真実は不明です。

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