ベルギーの街角から 2

ベルギーの復活祭は黄色で始まった

ベルギーの復活祭は黄色で始まった

“4月でもウールを忘れずに。5月になったらお気に召すまま”という諺通り、4月になっても肌寒い日が続きなかなか春が来ないベルギー。でも町のショーウィンドーに卵やひよこがあふれる復活祭ともなると、誰の心も気分は春です。今年の復活祭は例年になく早い3月27日、黄色いレンギョウの花と共に始まりました。折しもこの日、時計が夏時間に切り替わり街は急に光で溢れました。ところで、復活祭には卵がつきものですが、何故でしょう?

世界は卵から

太古の昔から卵は「生命」「繁殖」「宇宙」の象徴でした。インカ帝国の伝承によると、全ての神々は卵から生れ、その神が地上に送った金の卵からは尊い人、銀の卵からは女性達、その他の者は銅の卵から生れたそうです。中国では卵黄は大地、卵白は空と天体を表し、宇宙は卵から起こったと信じられていました。また、5千年も前からペルシャには、自然界の新生を祝い春になると卵を贈り合うという習慣がありました。

さて、復活祭とは、イエス復活の奇跡を祝うキリスト教の最も重要な祭りですが、復活祭と卵は当初特に関係はありませんでした。卵が復活祭に登場するようになったのは四旬節の断食にまつわる、というのが通説です。

初期カトリック教会はその布教のために大昔からの伝承や信仰を活用し、厳しい冬が終わり新しい生命が誕生する春の象徴である卵と、イエスの復活を重ねました。さらに、四旬節の期間は卵を禁食、口にできるのは聖日曜日の大ミサの後としました。しかもその卵はイエスが磔刑に処された日(聖金曜日)に産み落とされたものと決めたのです。やがて、歴代のフランス王達も復活祭の大ミサの後に祭壇の卵を国民に分け与えるなど、徐々にキリスト教徒の中に卵が象徴として定着して行きます。語弊を恐れずに言えば、脇役の卵のお陰で「キリストの復活」という考えがスムーズに人々の間に浸透していったのです。こうして復活祭には卵が欠かせないものとなりました。

今日のイースター

復活祭の朝、庭の茂みの卵を夢中で探した楽しい子供時代の思い出がないベルギー人はいません。中世から伝わるこの楽しい行事のルーツ、実は教会がカーニバルから復活祭までの40日間、卵の消費を禁止したため腐るほど余ってしまった卵をさばく手段だったのです。

現代の卵探しは、色を付けたゆで卵もありますが、圧倒的に人気があるのはチョコレート製です。この時期、チョコレート屋の店先がチョコレートの卵や鶏などであふれるのを見ると、彼らの年間売り上げの半分が復活祭だというのも肯けます。大手チョコレート会社は毎年趣向を凝らしたものを発表。今年は某メーカーが何百もの小さな卵を詰めた高さ3メートル以上の巨大なチョコレートの卵を発表したことが話題になりました。また、街角の花屋、薬局、スーパーなども色とりどりの卵で飾られ、街中が復活祭一色になります。

家庭では

共稼ぎの多いベルギーでは、学校が2週間の復活祭休暇に入ると、子供たちはお爺さんやお婆さんと休みを過ごすことが多いようです。ですからこの時期になると美術館でも地下鉄の中でも孫を連れたお年よりの微笑ましい光景をよく目にします。

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聖日曜日には親戚中が集まり、敬虔なカトリックの家庭では子供もいつものジーンズでなく少しお洒落をするようです。お昼近く、子供達の待ちに待った卵探しが始まります。もちろん卵は親が前日にこっそり置くのですが、この日のために6キロ分の卵を用意したなどと聞くと、さすがチョコレートの国の人と感心させられます。茂みの中や木の上と親も隠す場所に工夫を凝らすので、探す子供達も真剣です。子供が見つけた卵は、ローマから鐘が運んできた祝福された卵だと説明されます。面白いことに、鐘の代わりにアルザス地方では野うさぎ、チロル地方では雌鳥が、そしてスイスではカッコウが卵を隠すと云われます。

アッチだ、コッチだ、アッタ! 大人も混じっての嬉々とした卵探しが終わると昼食です。この日のご馳走には羊の腿肉や子羊が欠かせません。子供の楽しみが卵探しなら、この定番料理が大人の楽しみです。そしてデザートはもちろんニ・ド・パック(鳥の巣を模ったケーキ)。それまでの断食で好きなものを断っていた人もこの日からはおおっぴらに食べられます。もっとも、断つといっても、シャンパンやチョコレート断ちなどですが。

庭のない人や金銭的に無理な人はどうするのか? と気になるところですが、そこはカトリックの国、市や教会が0歳から12歳までなら誰でも参加できる無料の卵探しゲームを森や公園で主催してくれます。この風景はテレビや新聞でも報道され、何十人または何百人の子供達が籠や袋を持って一斉に卵探しに散らばる様子は微笑ましいベルギーの風物詩です。これを見ると我々でも春近し、と感じます。

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