ベニエ

ベニエ [beignet]

「ベニエ・スフレ」別名「ペ・ド・ノンヌ」「スピール・ド・ノンヌ」製作/中村 勇氏

「ベニエ・スフレ」別名「ペ・ド・ノンヌ」「スピール・ド・ノンヌ」製作/中村 勇氏

「ラルース料理百科事典」では、ベニエは「はれものを意味するケルト語からきているという説があるが、baigner、浸すという言葉に由来すると考える方がより適切だろう」と言っています。

ベニエのフライ用の衣は材料により異なりますが、シュー生地やブリオッシュ生地、ゴーフルの生地などを使います。揚げるものは野菜や肉、魚、さまざまです。お菓子に属するものとしては、洋酒に漬けておいた果物の他、クレーム・パティシエールなどのクリームも揚げてしまいます。

シュー生地で作ったベニエは「ベニエ・スフレ」またの名を「ペ・ド・ノンヌ」と言います。詩的で上品な菓名が多い中、「ペ・ド・ノンヌ」、尼さんのおならとは意外な命名です。これはマルムティエ大修道院の修道女アニエスが少量の生地を熱い油の中に落としてしまったという言い伝えからきていると言われています。その後、これでは余りにも品がないとsoupirs de nonne、「尼さんのため息」とも呼ばれるようになりました。

ベニエはクレープと共に祝祭日によく食べられます。クリスマスの40日後、2月2日はローソク、光の祭りである「聖母マリアのお清めの祝日」です。この日、マリアとヨセフはモーセの律法に従って、イエスを神に献げるため、エルサレムの神殿に行きました。この時、シメオンという信心深い老人がイエスを恭しく抱いて「この方こそ諸国の民を照らす光、主の民イスラエルの誇り」と御子を「光」と呼びました。以来、2月2日にはミサの前にローソクの祝別式とローソクの行列が行われ、主とその民の出会いを記念します。カトリックの国ではこの祝別されたローソクをしまっておいて臨終の際、ローソクに灯を点します。

この日、家庭ではクレープ作りが行われ、一部の地方ではベニエを作ります。クレープやベニエの丸い形は光と太陽の象徴と考えられています。

また、ある地方ではベニエは、クレープとともに悪運を避けるために使います。たとえばアルザスではよく卵を産むようにと、1つ目のベニエを雌鶏に与えるのだそうです。

(参考文献:「ラルース料理百科事典」(三洋出版貿易株式会社)
「名前が語るお菓子の歴史」ニナ・バルビエ/エマニュエル・ペレ著 北代美和子訳(白水社)
「教会の聖人たち」池田敏雄(中央出版社))

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