パン・ド・ジェーヌ [pain de Gênes]
ジェノヴァのパンという意味のパン・ド・ジェーヌは、アーモンドを使ったリッチなお菓子です。このお菓子はサント・ノーレ通りにあった名店「シブスト」(※1)のシェフ・パティシエ、フォヴェルの創作によるものだと伝えられています。アーモンドにラム、あるいはキルシュを加えて作ったビスキュイを「シブスト」ではアンブロワジー、神々の食べ物と名づけていました。
「神々の食べ物」が「ジェノヴァのパン」に名称が変わったのは、1800年のフランス軍がイタリアの町、ジェノヴァを包囲した時のエピソードに由来します。敵軍に包囲され、街に立てこもった兵士たちは残された食料のお米とアーモンド、5万Kgを食べて生き延びたというのです。
パン・ド・ジェーヌは周囲に溝のあるタイプのマンケ型 [monqué rond cannelé](※2)で作り、大きさは大・中・小あります。生地の製法が難しく、型が大き過ぎても深過ぎてもうまく焼けません。アーモンドは粒をローラーで挽いて使うのですが、ローマジパンを利用すれば手軽に作れます。泡立て方も要注意。泡立て過ぎればオーブンの中で吹き上げてしまうし、泡立てが充分でないと火の通りが悪くなってしまいます。シンプルな焼き菓子こそ、テクニックは奥深いものがあります。
※1洋菓子あれこれ「サント・ノーレ [Saint-Honoré]」参照
※2用語の解説「マンケ型 [moule à manqué]」参照
参考文献:「ラルース料理百科事典」(三洋出版貿易株式会社)
「名前が語るお菓子の歴史」ニナ・バルビエ/エマニュエル・ペレ著 北代美和子訳(白水社)