チョコレートとココアはカカオの豆から作られます(用語の解説:カカオ・バター /カカオ・ニブ/カカオ・マス/ココア参照)。カカオの実が成るカカオの樹の原生地は南米のアマゾン河流域やベネズエラのオリノコ河付近で、アマゾン河の奥地には今でもカカオの原生林が見られます。
カカオの樹は、アオギリ科ティオブロマ属に属し、学名をティオブロマカカオといいます。1720年、スエーデンの植物学者リンネによって名づけられ、ギリシャ語でティオは神、ブロマは食べ物、すなわち「神様の食べ物」を意味します。
7世紀、マヤ文明の時代、既にカカオの樹は栽培されていました。13~16世紀にかけてアステカ王国の勢力はメキシコ中部に及び、カカオの樹の栽培はメキシコ地方にも広がっていきました。栽培はされていたもののカカオ豆は非常に高価で、通貨として通用するほどでした。1520年頃、ニカラグラでのカカオの価値は100粒が奴隷1人に相当したといいます。
アステカ族はカカオ豆をすりつぶし、ヴァニラやコショウなどで香りをつけ、とうもろこしの粉を加えて冷やして固めておきました。飲む時にこれを細かくして湯か水で溶かし、激しくかき混ぜて泡立て、濃い飲料にして飲んだのです。彼らはこれを現地の言葉、kaj=bitter(苦い)とkab=juice(汁)に液体を表すatlを語尾につけカーカーアトル(ka-ka-atl)と呼びました。これがスペイン語の語形になってcocoaやcacaoになったといわれています。カーカーアトルは文字通りかなり苦く、ピリリと辛い飲み物でした。アステカの皇帝モンテスマは食事の時、酒の代わりにカーカーアトルを好んで飲んだと言います。彼は黄金の杯で精力剤として1日50杯、飲んだのだそうです。
参考文献:ガトー1980年1・2月号「チョコレートの話 1・2・3」日新化工株式会社技術課:石山茂樹