ガレット・デ・ロワ [galette des rois]
ビュッシュ・ド・ノエル一色だったクリスマスを過ぎるとパリのお菓子屋さんの主役はガレット・デ・ロワに変わります。galetteはgalet(小石)を語源とし、平たい丸い形のお菓子です。軍用ビスケットもgaletteと呼びます(「ラルース料理百科事典」にはフイユタージュで作った四角やリングのガレットの例が見られますが)。ガレットはその形から俗語ではお金、銭を指し、「ガレットがある」といえば財産家、お金持ちになります。
Roiは王様のことで、つまり「王様のお菓子」ということになります。ガレット・デ・ロワはロワール河以南の地方の大部分、特にパリ地域では1月2~8日の日曜日に祝われるEpiphanie(エピファニー)、公現祭を象徴するお菓子です。
エピファニーとは東方の3人の博士─アラビアの王メルキオール、エチオピアの王ガスパール、カルデアの王バルタザール─の前にキリストが現れたことを指し、幼子イエスの誕生が人々に知られることになった日を祝うのです。
この日、人々は友人たちと食事をし、ガレット・デ・ロワやガトー・デ・ロワを切り分けて楽しみます。お菓子の中にはフェーヴと呼ばれる陶製の人形が入っていてこのピースを引き当てた人が王様になります。
フェーヴとはそら豆のことで、古くはそら豆を隠していました。そら豆を引き当てた人は「1日だけの王様」として、実際の上下関係をひっくり返せたのです。このため陶製の人形をフェーヴと呼んだという説があります。また一方でローマ人が一家の息子を指すのに用いたéphèbe、エフェーヴという語の変形であろうという説もあります。
フェーヴは主としてキリスト教から着想を得ていますが、フランス革命の頃はフリージア帽や三色帽章など革命を表すフェーヴが使われました。今ではTGVやコンコルド、コンピューターを模した小さなフェーヴもあるそうです。
ガレット・デ・ロワは中にクレーム・フランジパーヌを絞ったものの他、生地だけで焼いたものもあります。生地もロワール河以北の地方や、地中海地方では発酵生地の王冠形に、砂糖漬けの果物を飾ったガトーが作られます。
(参考文献:「ラルース料理百科事典」(三洋出版貿易株式会社)
「名前が語るお菓子の歴史」ニナ・バルビエ/エマニュエル・ペレ著 北代美和子訳(白水社)
フランス語の散歩道/樫山文男)