博覧会に出品された洋風のお菓子にすべて漢字が当てられたのは博覧会の主催者の判断でした。
麺包(パン)、卵麺包(タマゴイリパン)、兵糧麺包、乾蒸餅(ビスケット)、糖被框実(コロモガケカヤノミ)、開花饅頭など漢字の表現に苦心のあとが伺えます。
ただ、米津松造氏は、褒賞を受けたとはいえ、ビスケットに乾蒸餅の漢字を当てられたことにいたく不満でした。せっかく舶来の機械を輸入し、苦心して大量生産への道を拓いたビスケットが、乾蒸餅では宣伝する気にもなりませんでした。もう西洋菓子への情熱も希望も失せて「いっそのこと郷里へ引き揚げよう」というくらい落ち込んだといいますから、役人も罪なネーミングをしたものです。
1885年(明治18年)になると内国勧業博覧会も海外からの入場者を意識してか、英語の表記が加わりました。日本のお菓子、煎餅は、A Kind of Cracknel、団子はRice dunplingとなりました。漢字を当てた西洋のお菓子の英語表記は次のようなものでした。
麺包(パン) | Bread |
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卵麺包(タマゴイリパン) | Bread made of flour and eggs |
兵糧麺包 | A kind of biscuit |
乾蒸餅(ビスケット) | Biscuit |
糖被框実(コロモガケカヤノミ) | The bessies of the torrega, coated with Sugar. |
開花饅頭 | A cake made of wheat flour. |
カスティラ | A kind of sugar Cake. |
漢字の表記にも戸惑いますが、英語で表現するのも難しかったことでしょう。