マジパン [marzipan]
挽いたアーモンド、砂糖、卵白で作ったペースト状のもの。焼き菓子の材料に用いられます。また可塑性があるので野菜や果物を本物そっくりに形作ったりします。
「現代洋菓子全書」によれば、マジパンの起源は非常に古くまで遡ります。古代ギリシャの地理学者ストラボン(B.C.65-A.D.24)は「北部メソポタミアに住むメディア人は果実や木の実を食べて暮らしていた。彼らは果物を干して粉にしたものを利用し、練ったアーモンドでパンを作っていた」と言っています。実際、中近東にはアーモンドや果物を使ったパンが今でも残っているのだそうです。
また、マルツィパン(Marzipan)と呼ばれるようになったいきさつを次のように紹介しています。これは1940年に発表されたオランダの言語学者Kluyverの説で、クルイヴェールによれば「十字軍が活動していた頃、東地中海沿岸諸国でアラビア語のマウタバン(mauthaban)という言葉が刻印された銀貨が流通していた。やがて高価な医薬品を入れる木の箱も銀貨と同様マウタバンと呼ぶようになった。この箱は13世紀になるとアーモンドと砂糖、ローズ・ウォーターで作った砂糖菓子の流通容器として使われるようになった。そして箱の呼び名がいつしか中身の名前とすりかわっていった」というものです。
「ラルース料理百科事典」では、小説家のバルザック(1799-1850)が「イスダン風のマスパンを世に宣伝しようと菓子屋を開いた」という嘘とも真ともつかない話を紹介しています。マスパン(massepain)とは「アーモンド、砂糖、卵白で作るパティスリー。香りや色を付けたマカロンに似たプティ・フール」、即ち、マジパンです。この頃、Issoudunのマスパンが評判だったのでしょう。別の文献には南仏のエクス・アン・プロヴァンス、シシリー島、スペインのカスティリアの地名も挙げられており、高価だったマスパンが一般の人に手の届くものになったのが分かります。
参考文献:「ラルース料理百科事典」(三洋出版貿易株式会社)
「現代洋菓子全書」(三洋出版貿易株式会社)