プリン/プディング pudding(英) プーダン pouding/クレーム・カラメル crème caramel/クレーム・ランヴェルセ・オ・カラメル crème renversée au caramel(仏)
プディングは昔からイギリス各地で作られていました。イギリスのプディングは一般にパティスリーに属していますが、ビーフステーク・プディング、ビーフステークと腎臓のプディングなどは料理の部類に属します。
小麦粉、卵、牛乳を材料とするプディングは5~6世紀頃イギリスに渡ってきたサクソン人が作っており、1066年にノルマン人がイギリスを征服するずっと以前からありました。12世紀、ヘンリー2世の料理人たちはラムのローストや果物にプディングの生地を塗っており、これがヨークシャー・プディングや現在のプディングの原形と考えられています。
中世の修道院では果樹園で採れた果物をオートミールに混ぜてプディングを作りました。エリザベス1世の時代に入ると薄味の肉汁、果汁、ぶどう酒、プラム、メース、パン粉を使ったプラム・ポリッジになりました。牛乳、小麦粉、バター、卵をとろりとなるまで煮詰めてシナモンを振りかけるヘイスティ・プディングなど、プディングは手近にある簡単な材料を利用したつつましいものでした。
イギリスのプディングで有名なのが、クリスマスの食事を彩る、クリスマス・プディングとも呼ばれるプラム・プディングです。ケンネ脂やレーズン、砂糖漬けのピール、香辛料で作られるプラム・プディングをクリスマスに初めて食べたのはドイツ系のジョージ1世でした。ジョージ1世はイングランドで迎えた初めてクリスマスの1714年、濃厚なレーズン入りのこのプディングを食べたのです。以来、この習慣が一般に広まったといいます。プラム・プディングは7つの海を制したイギリスならではの食べ物です。といいますのも航海中、食材の調達は思うにまかせません。パン屑や小麦粉、ラード、レーズンなど積んであるあり合わせの材料を混ぜて味付けし、布で包んで紐で縛り、蒸し煮にしたのがプラム・プディングの起こりなのです。彼らはこれにチーズを振りかけて食べたといいます。
プディングは温製と冷製、甘味と塩味のタイプに分けられますが、卵、小麦粉、コーンスターチなど凝固させる材料によって分類することもできます。
イギリス生まれのプディング、フランスに行くと綴りはpoudingです。プーディング、あるいはフランス式にプーダンと発音します。ただ、カスタード・プディング [custard pudding] はクレーム・カラメル [crème caramel] とかクレーム・ランヴェルセ・オ・カラメル [crème renversée au caramel] と呼び、もはや名前にプディングの面影はありません。renversé「ひっくり返した、上下逆にされた」という意味で、ひっくり返して皿にあけカラメルが流れる様子が伝わってきます。
参考文献:「ラルース料理百科事典」(三洋出版貿易株式会社)
TIME LIFE BOOKS 世界の料理「イギリス料理」 エイドリアン・ベイリー
フランス語の散歩道 7 樫山文男(ガトー1981年10月号)
英国大使館ホームページ