ビュッシュ・ド・ノエル

ビュッシュ・ド・ノエル [bûche de Noël]

製作/金子哲也氏

製作/金子哲也氏

フランスではクリスマス・イヴの日、遠く離れていた家族が一同に集い、食卓を囲んでイヴを祝います。食事のあと、真夜中のミサまでの時間、それぞれが太い薪を持って暖炉に集まり、薪をくべて暖を取ります。この特別な太い薪をビュッシュ・ド・ノエル(bûche de Noël)といいます。今でも一部の土地では行われているそうですが、都会暮らしではこの伝統も廃れてきました。

この行事をお菓子で表現したのが菓子職人であり料理の歴史家でもあったピエール・ラカン(1836-1902)でした。ビュッシュ・ド・ノエルが盛んに作られるようになったのは1870年以降のことで、今ではクリスマスが近づくとフランスのお菓子屋さんの店頭はビュッシュ・ド・ノエル一色に染まります。

ビュッシュ・ド・ノエルはジェノワーズを巻いてクレーム・オ・ブールを塗り、樹木の表面のように筋をつけます。きのこ(ムラング)や柊木の葉(パート・ダマンド)が飾られ、苔むした樹には蔦(クレーム・オ・ブール)が絡み、雪(粉砂糖)もちらついています。イヴの夜を彷彿とさせるこうしたトラディショナルなビュッシュ・ド・ノエルも、最近はパティシエの創意工夫で、ムースやアイスクリームなどさまざまなタイプのものが作られるようになりました。

参考文献:「ラルース料理百科事典」(三洋出版貿易株式会社)
「名前が語るお菓子の歴史」ニナ・バルビエ/エマニュエル・ペレ著 北代美和子訳(白水社)

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