ベルギーの郷土菓子 21 最終回
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知っていますか? 製菓原材料
宮崎真紀

Jules Destrooper
 ベルギーといえば誰の頭にもすぐ浮かぶのがチョコレート。王室御用達のショコラティエも5店ありそれぞれ個性を競い合っています。ビスケット分野の王室御用達はジュル・デストルーパー。ブリュッセルやブルージュの素朴な風景と愉快で可愛い人々を描いた缶入りビスケットは日本でもお馴染みとなっています。
 ブリュッセルから車で北西に1時間半ほど行ったフランス国境に近いロ・レニングの本社に向かいました。走れど走れど延々と続く畑や牧草地。さては道を間違えたかと不安になったほどこの辺りには草原と牛以外なにもありません。やっとたどり着いた町は閑散としていて、昼食に入ったブラッスリーでの客は常連らしき初老のカップルと我々だけでした。店主に工場への道順をたずねると誇らしげに教えてくれ、近郊の町のたくさんの人がデストルーパーで働いていると付け加えるのも忘れません。

手土産がきっかけ
 今から約130年前、ジュル・デストルーパー氏は洗濯屋と駄菓子屋を兼ねる店を営んでいました。ビスケット職人になったきっかけは、北海にあるホテルへ洗濯物を届ける時にサービスで持っていったホームメイドのビスケットでした。北海沿岸はドーバー海峡を越えて遊びに来るイギリス人が一年を通じて多いところです。紅茶と共に出した彼のビスケットがとても好評だったため、ホテル側が本格的なビスケット製造を依頼してきました。

日本の技術
 1886年、ジュルはビスケット会社を創立。1911年パリ国際食品見本市で彼のアーモンド・ビスケット(pain aux amandes)が金賞となったことが火付けになり、パリのフォーションやロンドンのフォートナム&メイソンといった有名店からの注文が舞い込むようになりました。しかし外国への輸出に向けて新しい問題が持ち上がりました。
「賞味期限」です。創業以来の添加物や保存料なしのビスケットは日持ちがしません。
 それを打開したのが、見本市で偶然目にした日本の会社が開発した保存技術でした。この出会いにより賞味期限が大幅に延長。今ではヨーロッパ近隣諸国はもとより世界中に輸出されています。

若い後継者ステファン
 北海の町コクシードは、高級避暑地のクノックやカジノと温泉もある大避暑地オステンドとも違い、小さいけれどなかなか文化的です。市は特にアートや音楽に力を入れ、文化センターでは国内外の芸術家を招いた展覧会やパーフォーマンスなど数多く発表されます。ここにはベルギー人画家のポール・デルヴォー美術館、ヨーロッパ最古のフランシスコ修道院跡(現博物館)、北海最大の砂丘、ミシュラン星付きレストランまでもあります。
 メイン通りには片田舎にそぐわないシャレた店構えのパティスリー“ステファン・デストルーパー(Stephan Destrooper)”があります。ステファンはジュルの孫で、パリ風のパティスリーの傍にはあのビスケットの箱も並びます。ブルージュの製菓学校卒業後、パリの有名店で修業。3年前に店を持ちました。去年は当地の有名画家とのコラボを開催したそうで、これもパリ仕込みかしら?

ベルギーのお茶うけ
 会社の経営は彼の従弟2人。若い感覚で新製品の開発や市場開拓など意欲的に取り組んでいるそうです。
 ところで、ステファンにジュル・デストルーパーの製品で何をトップにあげるかを聞くと、アーモンド・ビスケット!と即答あり。
 「美味しいビスケットの秘密は、小麦粉そしてミルク、バター、卵などビスケット製造に不可欠な原料が全て近郊で生産されているからだと思います。ノワゼットやアーモンドは産地を厳選しています。アーモンド・ビスケットの材料は、小麦粉、砂糖、バター、アーモンド、塩、大豆、ノワゼットといたってシンプルですが、今でもジュルのレシピを忠実に守っています」
 ベルギーではどこのカフェに入っても、コーヒーや紅茶など温かい飲み物には必ずお茶うけのビスケットやチョコレートが添えてあるのをご存じでしょうか? たかが一枚といえど嬉しく、それがパリパリッと歯応えの良いバターの香り豊かなジュル・デストルーパーのビスケットだったりすれば尚更です。