ベルギーの郷土菓子 21 最終回
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知っていますか? 製菓原材料
連載エッセー
宮崎真紀

ベルギーにはサンタが2回来る
 日本の子供たちからは「うそー!」という声が上がりそうですが、本当の話です。12月6日の朝、良い子の枕元や暖炉の下にプレゼントを置いてくれるのは聖ニコラ(仏語でサンニコラ)。子供の守護聖人です。前の晩、子供達はサンニコラのためにビールを、彼が乗ってくるロバにはニンジンや角砂糖を用意して眠ります。サンニコラには学校や街角でも会うことが出来ます。6日の朝、幼稚園や小学校を訪れたサンニコラは、「よく勉強をしたかな? 家のお手伝いをしているかな?」などと子供達に質問し、良い子だけがプレゼントを貰えます。彼の傍には必ずペールフエター(ムチでたたく人の意味)という黒人の従者が控えていて、悪い子は彼にムチでおし置きをされるか、船に乗せられて遠いスペインまで連れて行かれます。サンニコラのプレゼントはスペキュロースというスパイス類が香ばしいビスケットや本などです。

サンタクロースのルーツはこの人
 サンニコラは4世紀ごろに実在した司教です。彼はパトラス(当時はギリシャ支配下の都市。現在のトルコの南部)の裕福なキリスト教徒の家庭に生れました。財産の全てを孤児や寡婦の救済に投じるなど、その生涯は貧しく不幸な人々のために捧げられました。その彼がローマ皇帝に迫害されて殉死したのが12月6日なのです。サンニコラはロシア・ギリシャ正教会の諸聖人中で最も尊敬され親しまれており、その姿はイコン、絵画、ステンドグラスなどにたくさん残されています。325年、サンニコラがローマ法王謁見のためローマに向かう途中、南イタリアのバリで船乗りたちを救ったという伝説から、11世紀になりノルマン人の船乗りの守護聖人に指定されました。このため海岸沿いのオランダ、ベルギー、ドイツ、イギリスなどゲルマン系言語の国にサンニコラ礼賛が浸透しました。これらの国ではサンニコラの名前を知らない子供はいません。
 では、サンニコラがどうしてサンタクロースの先祖になったのでしょう? 仕掛けたのはオランダ人です。17世紀、オランダ人がアメリカのニューアムステルダム(後のニューヨーク)に移住したことで、サンニコラ礼賛も海を越えアメリカ大陸に渡りました。オランダ語でサンニコラはシントクラース(Sinter Klaas)、これが英語でサンタクロース(Santa Claus)となったのです。1823年のニューヨークの新聞には、空を飛び煙突から入ってくる小人のサンタクロースの話が載っていますが、どうしてサンニコラが12月6日ではなく25日のクリスマスにプレゼントを持って来るようになったのかは定かではありません。ところで、両人とも長い白いひげに赤いコートを着ていますが、赤い司教服を着て、司教杖をもっている方がサンニコラです。

ベルギーの12月
 ベルギーの冬はサンニコラから始まります。11月の下旬ともなるとパティスリーの店先にはサンニコラを模ったスペキュロースやマジパンが並び、幼稚園や小学校の低学年のクラスでは絵を描いたり歌の練習をするなど、サンニコラを迎える準備が始まります。ところで、サンニコラにはこんな伝説があります。『昔々、道に迷った3人の子供が肉屋に宿と食べ物を求めました。ところが、悪い肉屋は子供達を殺し、ソーセージ用の肉にするため樽に入れ塩漬けにしてしまいました。数日後、通りかかったサンニコラが子供の肉のソーセージを求めたので、恐れ入った肉屋は逃げて行き、サンニコラが3本の指で空を切ると子供達が生き返りました』
 古代ローマ時代、新年のお年玉として子供達に与えられたスペキュロースは、小麦粉にシナモン、クローブ、ナツメグ、カルダモン、胡椒などのスパイス類と蜂蜜を加え砂岩の型に入れて焼いた貴重な保存食でした(スペキュロースの語源はラテン語のスパイスに由来する)。中世以降になり砂糖、バター、卵などが加えられましたが、いずれにしても当時は貴重なもので、子供はサンニコラの日に特別にもらえました。今でもこれが習慣となり、良い子にはスペキュロースが与えられます。
 海を越えて伝わったサンニコラは、サンタクロースとしてヨーロッパに再上陸。イエス誕生を祝うクリスマスと結びつき、今や年間売り上げの約70%を授けるという商売の神様となりました。街中がイルミネーションに輝き、デパートのショーウィンドーは売れっ子のインテリアデザイナーの手により夢のように飾られます。しかしクリスマスはベルギー人にとっては、24日の真夜中のミサに始まる厳粛な宗教行事であり家族が集う時です。25日は家族や親戚中が集い、もみの木の下にはそれぞれの人へのプレゼントが置かれます。クリスマスを祝い食べるものは、生牡蠣、フォワグラ、スモークサーモンに始まりオマールエビやジビエまたは七面鳥、デザートは定番のビュッシュ・ド・ノエル。有名パティシエも毎年趣向を凝らしたものを用意します。今年の冬はマカロンが大流行。スペキュロース味やフランボワーズ味などのマカロンを使ったツリーやビュッシュが飛ぶように売れていました。

有名パティスリーのビュッシュ・ド・ノエル紹介
ヴィタメール デュコビュ マルコリーニ デルレイ

ダルシ ドバール マイユー